線形代数 · 第8回 · 動画1 · インタラクティブ教材

Ax = b が解をもつのはいつか?

I重要な公式

概念 公式 / ルール 意味
列空間 C(A)={Ax:x∈Rn}C(A) = \{A\mathbf{x} : \mathbf{x} \in \mathbb{R}^n\} AxA\mathbf{x} として到達できるベクトル b\mathbf{b} の全体
可解性 Ax=bA\mathbf{x} = \mathbf{b} が解をもつ   ⟺  b∈C(A)\iff \mathbf{b} \in C(A) b\mathbf{b} は列空間に属していなければならない
行のテスト c1R1+c2R2+⋯=0c_1 R_1 + c_2 R_2 + \cdots = \mathbf{0} ならば c1b1+c2b2+⋯=0c_1 b_1 + c_2 b_2 + \cdots = 0 行の従属関係が b\mathbf{b} に制約を課す
矛盾 [0  0  ⋯  0∣d][0 \; 0 \; \cdots \; 0 \mid d](ただし d≠0d \neq 0) 左側が零行で右辺が 0 でない → 解なし

II可視化1 — 列空間に乗るかどうか

Ax=bA\mathbf{x} = \mathbf{b} が解をもつのは、b\mathbf{b} が列空間の上に乗るときちょうどです。この図では、列空間は直線 b3=b1+b2b_3 = b_1 + b_2 として現れます。

💡 条件 b1+b2=b3b_1 + b_2 = b_3 は、A=[1222246836810]A = \begin{bmatrix} 1 & 2 & 2 & 2 \\ 2 & 4 & 6 & 8 \\ 3 & 6 & 8 & 10 \end{bmatrix} の行が R1+R2=R3R_1 + R_2 = R_3 を満たすことから来ています。そのため C(A)C(A) は R3\mathbb{R}^3 全体ではなく、階数 2 の平面です。

III可視化2 — 消去法で条件があらわになる

右辺を [A∣b][A \mid \mathbf{b}] に入れて消去すると、最後の行は 0=b3−b1−b20 = b_3 - b_1 - b_2 につぶれます。

[ A | b ] — 元の行列

[ U | b′ ] — 消去後

💡 最後の行の残差は、R1+R2−R3R_1 + R_2 - R_3 を b\mathbf{b} に施したものです。AA の行の従属関係が、b\mathbf{b} の満たすべき制約になるのです。

IV可視化3 — 解をもつのはどれほどまれか

ランダムな右辺が b3=b1+b2b_3 = b_1 + b_2 をぴったり満たすことは、まずありません。解をもつ右辺の集合は、体積 0 の平面だからです。

💡 未知数が4つで方程式が3つしかなくても、ほとんどの b\mathbf{b} では解がありません。従属関係 R1+R2=R3R_1 + R_2 = R_3 によって、C(A)C(A) は R3\mathbb{R}^3 の中の2次元の平面に閉じ込められているからです。

V確認クイズ

問1

A=[1222246836810]A = \begin{bmatrix} 1 & 2 & 2 & 2 \\ 2 & 4 & 6 & 8 \\ 3 & 6 & 8 & 10 \end{bmatrix} のとき、Ax=bA\mathbf{x} = \mathbf{b} が解をもつのは、どの右辺 b\mathbf{b} でしょうか。

✅ 正解です! 2+3=52 + 3 = 5 なので、条件 b1+b2=b3b_1 + b_2 = b_3 が満たされています。

❌ 惜しい! 各選択肢について、b1+b2=b3b_1 + b_2 = b_3 が成り立つかどうかを確かめましょう。

解答を見る

解答:

可解条件は b1+b2=b3b_1 + b_2 = b_3 です(AA では 1行目 + 2行目 = 3行目 だからです)。

各選択肢を確かめます。

  • b=(1,2,4)\mathbf{b} = (1, 2, 4): 1+2=3≠41 + 2 = 3 \neq 4 ✗
  • b=(2,3,5)\mathbf{b} = (2, 3, 5): 2+3=52 + 3 = 5 ✓ 解をもつ!
  • b=(1,1,1)\mathbf{b} = (1, 1, 1): 1+1=2≠11 + 1 = 2 \neq 1 ✗
  • b=(0,0,1)\mathbf{b} = (0, 0, 1): 0+0=0≠10 + 0 = 0 \neq 1 ✗

答えは b=(2,3,5)\mathbf{b} = (2, 3, 5) です。

問2

拡大係数行列 [A∣b][A|\mathbf{b}] にガウスの消去法を行ったところ、行 [0    0    0    0  ∣  0][0 \;\; 0 \;\; 0 \;\; 0 \;\mid\; 0](両側ともすべて 0)が得られました。このことから何がわかるでしょうか。

✅ 正解です! 0=00 = 0 はいつでも正しいので、矛盾ではなく冗長な方程式です。

❌ 惜しい! その方程式は 0=00 = 0 と言っています。これが誤りになることはあるでしょうか。矛盾が生じるのは、右側が 0 でないときだけです。

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解答:

行 [0  0  0  0∣0][0\; 0\; 0\; 0 \mid 0] は 0=00 = 0 を表し、これはいつでも正しい式です。つまり冗長な方程式で、新しい制約を何も加えません。

区別すべき点:

  • 零行 + 右辺が 0 → 0=00 = 0 → 矛盾なし → 連立方程式はまだ解をもつ可能性がある
  • 零行 + 右辺が 0 でない → 0=d≠00 = d \neq 0 → 矛盾 → 解なし

解がちょうど1つか無数にあるかは、零行そのものではなく、ピボット列の個数と未知数の個数の比較で決まります。

問3

正しいか誤りか:連立方程式 Ax=bA\mathbf{x} = \mathbf{b} の未知数が方程式より多ければ、どんな b\mathbf{b} に対しても少なくとも1つの解をもつことが保証される。

✅ 正解です! 未知数がいくつあっても、行の従属関係があれば、ある b\mathbf{b} に対しては解をもたなくなります。

❌ 惜しい! 動画の 3×43 \times 4 の例を思い出しましょう。どんな b\mathbf{b} でも解が得られたでしょうか。

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解答:誤り。

動画の例の AA は 3×43 \times 4 行列です(方程式が3つ、未知数が4つ)。それでも b1+b2≠b3b_1 + b_2 \neq b_3 のときは、Ax=bA\mathbf{x} = \mathbf{b} は解をもちません。

なぜでしょうか。 AA の行の従属関係が、b\mathbf{b} に制約を課すからです。行が一次従属なら、ある一次結合が零行になり、b\mathbf{b} も同じ一次結合について条件を満たさなければなりません。

未知数が方程式より多いことで実際に保証されるのは、「解が存在するならば、それは一意ではない(自由変数がある)」ということです。しかし、解の存在そのものは b\mathbf{b} しだいです。

問4

3×33 \times 3 行列 BB の行が、関係 2⋅(1行目)−1⋅(2行目)+1⋅(3行目)=02 \cdot (\text{1行目}) - 1 \cdot (\text{2行目}) + 1 \cdot (\text{3行目}) = \mathbf{0} を満たしています。

Bx=bB\mathbf{x} = \mathbf{b} が解をもつために、b=(b1,b2,b3)\mathbf{b} = (b_1, b_2, b_3) が満たすべき条件はどれでしょうか。

✅ 正解です! まったく同じ係数 (2,−1,1)(2, -1, 1) を、b\mathbf{b} の成分に施します。

❌ 惜しい! 行の一次結合の係数が、そのまま移ります:2⋅b1+(−1)⋅b2+1⋅b3=02 \cdot b_1 + (-1) \cdot b_2 + 1 \cdot b_3 = 0。

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解答:

動画の重要なルール:AA の行のある一次結合が零行になるなら、同じ一次結合を b\mathbf{b} に施した結果も 0 でなければならない。

与えられた関係:2⋅R1−1⋅R2+1⋅R3=02 \cdot R_1 - 1 \cdot R_2 + 1 \cdot R_3 = \mathbf{0}

同じ係数 (2, −1, 1)(2,\, -1,\, 1) を b\mathbf{b} に施すと:

2b1−b2+b3=02 b_1 - b_2 + b_3 = 0

これが求める可解条件です。ベクトル (2,−1,1)(2, -1, 1) は BB の左零空間に属しています。

正解数:0 / 4