線形代数 · 第9回 · 動画2 · インタラクティブ教材

ゴルディロックスの原理:基底と次元

I重要な公式

公式 名称 説明
c1v1+c2v2+⋯=0⇒c_1\mathbf{v}_1 + c_2\mathbf{v}_2 + \cdots = \mathbf{0} \Rightarrow すべての ci=0c_i = 0 一次独立 零ベクトルを作れるのは自明な解だけ
Span{v1,…,vk}=V\text{Span}\{\mathbf{v}_1, \ldots, \mathbf{v}_k\} = V 空間を張る組 VV のどのベクトルも一次結合で書ける
nn 本のベクトルが Rn\mathbb{R}^n の基底   ⟺  \iff det⁡≠0\det \neq 0 基底の判定 行列が可逆かどうかで、両方の性質を一度に確かめられる
dim⁡(V)=\dim(V) = 任意の基底に含まれるベクトルの本数 基底の本数の定理 この本数は VV のどの基底でも同じ

II可視化1 — 平行四辺形による判定

2本のベクトルが R2\mathbb{R}^2 の基底になるのは、ちょうど2本が作る平行四辺形の面積が 0 でないときです。そしてその面積は ∣det⁡∣|\det| です。

💡 チャレンジ:v2\mathbf{v}_2 を v1\mathbf{v}_1 の定数倍にしてみましょう。たとえば v1=(2,1)\mathbf{v}_1 = (2, 1), v2=(4,2)\mathbf{v}_2 = (4, 2) です。面積は 00 につぶれます。一次従属な2本のベクトルが張るのは、直線だけです。

III可視化2 — 3×3 の行列式による判定

v1,v2\mathbf{v}_1, \mathbf{v}_2 を固定して、3本目のベクトルを動かします。行列式が 0 でなくなるのは、ちょうど v3\mathbf{v}_3 が2本の張る平面から外れるときです。

A = [ v₁ | v₂ | v₃ ]

💡 (3,4,7)=v1+v2(3, 4, 7) = \mathbf{v}_1 + \mathbf{v}_2 は平面の中にあるので det⁡=0\det = 0 です。(3,3,8)(3, 3, 8) は平面から外れるので、独立な方向が3つになり、det⁡=2\det = 2 です。

IV可視化3 — 少なすぎ、ちょうどいい、多すぎ

R2\mathbb{R}^2 の基底には、ちょうど2本のベクトルが必要です。1本足りなければ空間を張れず、1本多ければ必ず余分なベクトルが出ます。

💡 このちょうどいい本数(22 は R2\mathbb{R}^2 の、33 は R3\mathbb{R}^3 の本数)が次元です。ある空間の基底は、どれも同じ本数のベクトルからなります。

V確認クイズ

問1

行列 A=[123133258]A = \begin{bmatrix} 1 & 2 & 3 \\ 1 & 3 & 3 \\ 2 & 5 & 8 \end{bmatrix} は det⁡(A)=2\det(A) = 2 です。

AA の列は R3\mathbb{R}^3 の基底になりますか。

✅ 正解です! n×nn \times n 行列では、det⁡≠0\det \neq 0 を一度計算するだけで、一次独立と空間を張ることの両方が確かめられます。

❌ 惜しい! 重要な定理を思い出しましょう。nn 本のベクトルが Rn\mathbb{R}^n の中にあるとき、行列が可逆かどうか(det⁡≠0\det \neq 0)が、基底かどうかを決めるただ一つの判定です。

解答を見る

解答:

nn 本のベクトルが Rn\mathbb{R}^n の中にあるとき、基底かどうかはこの一つの判定でわかります:

n 本のベクトルが Rn の基底をなす  ⟺  n×n 行列が可逆  ⟺  det⁡≠0n \text{ 本のベクトルが } \mathbb{R}^n \text{ の基底をなす} \iff n \times n \text{ 行列が可逆} \iff \det \neq 0

det⁡(A)=2≠0\det(A) = 2 \neq 0 なので、この行列は可逆です。これで次の2つが同時に保証されます:

  • 一次独立:零空間は 0\mathbf{0} だけからなる
  • 空間を張ること:R3\mathbb{R}^3 のどのベクトルにも届く

一回のチェックで、二つ分です。答えは「なる」です。

注意:行列式の値(2)が表すのは体積の拡大率であって、一次独立なベクトルの本数ではありません。

問2

ベクトル v1=(1,1,2)\mathbf{v}_1 = (1, 1, 2) と v2=(2,3,5)\mathbf{v}_2 = (2, 3, 5) は、R3\mathbb{R}^3 の中の平面を張ります。ベクトル (3,4,7)(3, 4, 7) は v1+v2\mathbf{v}_1 + \mathbf{v}_2 に等しくなっています。

Span{v1, v2, (3,4,7)}\text{Span}\{\mathbf{v}_1, \, \mathbf{v}_2, \, (3, 4, 7)\} の次元はいくつですか。

✅ 正解です! 一次従属なベクトルは、新しい次元を増やしません。張る空間は 2 次元の平面のままです。

❌ 惜しい! (3,4,7)(3,4,7) はもともと最初の2本が張る空間に入っているので、加えても張る空間はまったく変わりません。

解答を見る

解答:

(3,4,7)=v1+v2(3, 4, 7) = \mathbf{v}_1 + \mathbf{v}_2 なので、3本目のベクトルは最初の2本の一次結合です。一次従属なベクトルを加えても、張る空間は広がりません:

Span{v1,v2,(3,4,7)}=Span{v1,v2}\text{Span}\{\mathbf{v}_1, \mathbf{v}_2, (3,4,7)\} = \text{Span}\{\mathbf{v}_1, \mathbf{v}_2\}

張る空間は同じ 2 次元の平面のままです。組 {v1,v2}\{\mathbf{v}_1, \mathbf{v}_2\} はその平面の基底(一次独立な2本のベクトル)なので:

dim⁡=2\boxed{\dim = 2}

これはゴルディロックスの原理でいう「多すぎ」の場合です。3本目のベクトルはお荷物なのです。

問3

正しいか誤りか:ベクトル空間 VV が、4本のベクトルからなる基底と、5本のベクトルからなる別の基底の両方をもつことがある。

✅ 正解です! 基底の本数の定理により、同じ空間の基底はどれも同じ本数のベクトルからなることが保証されます。

❌ 惜しい! 基底の本数の定理を思い出しましょう。基底のベクトルの本数は空間の不変量であって、選び方で変わるものではありません。

解答を見る

解答:

誤り。これは基底の本数の定理に真っ向から反します:

与えられたベクトル空間の基底は、どれも同じ本数のベクトルからなる。

この変わらない本数が、空間の次元です。ある基底が4本のベクトルからなるなら dim⁡(V)=4\dim(V) = 4 であり、VV のほかのどの基底もちょうど4本のベクトルからなります。

4 次元の空間にある5本のベクトルの組には、一次従属な(余分な)ベクトルが少なくとも1本必ず含まれるので、基底にはなりえません。

問4

dim⁡(R4)=4\dim(\mathbb{R}^4) = 4 であることはわかっています。いま、R4\mathbb{R}^4 の4本のベクトルの組があります。動画で紹介した、基底かどうかを確かめるアルゴリズムによれば、これが基底であることを確かめるのに最低限必要なチェックは何ですか。

✅ 正解です! ベクトルの本数がわかっている次元と一致するなら、一次独立だけを確かめれば十分です。空間を張ることは自動的に従います。

❌ 惜しい! 次元がわかっていて、ベクトルの本数が合っているときは、基底を確かめるアルゴリズムに強力な近道があります。

解答を見る

解答:

dim⁡(R4)=4\dim(\mathbb{R}^4) = 4 であることがわかっていて、ベクトルはちょうど k=4k = 4 本なので、アルゴリズムは次のように進みます:

  1. ✅ 次元はわかっているか? はい、d=4d = 4。
  2. ✅ 本数は合っているか? はい、k=d=4k = d = 4。
  3. 一次独立だけを確かめる:4×44 \times 4 行列を作り、det⁡≠0\det \neq 0 を確かめます。

基底の本数の定理から得られる強力な近道です。ちょうど dd 本のベクトルが dd 次元の空間にあるとき、一次独立なら自動的に空間を張ります。ですから、一次独立だけを確かめれば十分です。

特に Rn\mathbb{R}^n では、行列が可逆かどうかの判定(det⁡≠0\det \neq 0)一つで、すべてが確かめられます。

注意:直交性は一次独立より強い条件です。基底であるための十分条件ではありますが、必要条件ではありません。

正解数:0 / 4